日本での大規模なAFOの効果検証結果。AFOは効果あるのか?どんな人に効果的か?

Effects of Ankle窶擢oot Orthoses on Functional Recovery after Stroke: A Propensity Score Analysis Based on Japan Rehabilitation DatabaseThe purpose of the present study was to investigate potentialwww.ncbi.nlm.nih.gov

ちょっと詳しく説明します

目的
多くの臨床研究ではAFOの即効性のみが検討されており、脳卒中後の回復期に従来のAFOを使用した場合のリハビリテーションの成果に対する有効性については関連文献がない。AFO使用が急性期脳卒中後の患者の機能回復に及ぼす影響を、傾向スコア法と日本リハビリテーションデータベースを用いて明らかにすることを目的とした。

方法
日本リハビリテーションデータベースに登録された脳卒中患者のデータをもとに解析
(日本リハビリテーションデータベースは厚生労働省の財政支援を受けて開発されたもの。参加病院から退院したリハビリテーション入院患者の詳細な臨床データを収集。任意サンプルのみで構成されており、無作為サンプルではない。このデータベースには、年齢と性別、FIM、入院期間、発症からの日数、脳卒中の種類、運動量、BRS、mRS、AFOの処方が登録されている)

対象者
2005年1月から2012年10月。
33の参加リハビリテーション病院の回復期リハビリテーション病棟で脳卒中と診断され入院した患者を対象。
日本リハビリテーションデータベースより作成。
その他の包括基準
(1)年齢が20~90歳であること。
(2)入院時の脳卒中発症から90日以内であること。
(3)入院期間が30~180日であること。
(4)出血性脳卒中または虚血性脳卒中と診断されていること。
(5)発症前のmRSが1~3であること(発症前に重度の障害がないこと)。
(6)入院時の下肢のBRSが1または5であること(軽度~重度の麻痺があること)。
(7)完全なデータを持っていること。

リハビリテーションプログラム
典型的な運動プログラムは、週5~7日、1日40分の理学療法と40分の作業療法で構成されていた。必要に応じて言語療法も実施された。
看護師の監督の下で、1日20~30分、週5~7日(セラピストが同席していない状態で)、立ったり歩いたりするような典型的な自立運動が行われた。
データは、患者が入院中に自主的な運動を行ったかどうかのみを示しており、運動の質や量は示していない。

AFO
被験者をAFO群とAFOなし群の2群に分ける。
AFO群:入院中に院内運動のためにAFOを処方された患者。
No-AFO群:入院中にAFOを処方されなかった患者。

データ分析
AFO群、No-AFO群において被験者の特製に違いが出たため傾向スコア分析を用いて背景情報のバランスを調整して調査。
T-検定およびカイ二乗検定を用いてAFO群とAFOなし群の比較を行った。
患者のマッチング後、患者をFIM中央値で高FIM群(63歳以上)と低FIM群(63歳未満)に分け、入院時のFIMに焦点を当て分析も行った。

結果

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研究期間中に総計4464人の脳卒中患者が同定された。
基準に満たさない患者の除くと解析対象となった患者は1862名であった。
AFO処方率は30.7%であった。

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対象者のデータ

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全患者(n = 1862)と傾向スコアをマッチさせた患者(n = 792)について、AFO群とNo-AFO群の患者の人口統計

全患者の中で、AFOを有する患者572人とAFOを有さない患者1290人が同定された。
1対1の傾向スコアマッチングを用いて、AFO群とNo-AFO群から396組を抽出した。
マッチング前ではNo-AFO群では、AFO患者の方が若く、入院期間が長く、入院FIMが低く、運動量が多かった。
マッチング後ではAFO群とNo-AFO群の間で有意差はなかった。

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AFO群とNo-AFO群の退院FIM

マッチングさせた群では、退院FIM(91.3±26.9 vs 85.8±35.2;p=0.02)、FIM利得(28.9±17.4 vs 23.5±21.0;p<0.001)、FIM効率(0.27±0.19 vs 0.22±0.25;p<0.001)であり、AFO群がNo-AFO群に比べて有意に高いスコアを示した。
入院FIMのサブセット解析では、入院時低FIM(63点未満)サブグループのみでは、AFO群はNo-AFO群と比較して退院FIMが有意に高かった。
入院高FIM(63点以上)サブグループでは、AFO群はNo-AFO群よりも高い退院FIMを示したが、この差は有意ではなかった。
逆確率重み付けによる調整後の退院FIMは、AFO群の方がNo-AFO群よりも有意に高かった(93.2±27.1 vs 88.0±33.7;p<0.001)。

議論
本研究は、いくつかの重要な特徴についてグループをマッチングさせることで選択バイアスを軽減するために傾向スコア分析を行った点がユニークであった。
本研究では、AFOがリハビリ中の脳卒中患者の機能回復に重要な役割を果たす可能性があることを発見した。
AFO群では独立した運動量が多かった。AFOは立位や歩行のバイオメカニクスを改善することで、患者がより安全に、自信を持って、効果的に移動や運動ができるようになる。このようなバイオメカニクスが、本研究での機能回復にプラスの影響を与えている可能性がある。
AFOを作製することで運動意欲が高まった可能性や、AFOによって運動の難易度がコントロールされ、セラピストがいなくても治療室以外の場所での運動が容易になった可能性が考えれる。
また、AFOによって異なる治療が可能になった可能性も考えられる。
その結果、AFOの処方が退院総FIMスコアを上昇させる可能性がある。
サブセット分析によると、AFOの使用は、低FIM患者の良好な回復と関連していた。
低FIM患者は中等度から重度の障害と運動困難を有しているようであった。このような患者は、適切なリハビリテーションに必要な運動を行うことが困難であった。AFOの使用は低FIM患者にとって運動を容易にした可能性がある。

限界
データベースには、AFOがいつ処方されたか、リハビリ中に処方されたAFOがどのくらいの頻度で使用されたか、患者が備品のAFOを借りたかどうかなどの詳細な情報が欠けている。
この研究では、個々の患者が使用しているAFOの種類に関する詳細な情報を得ることができなかった。
日本リハビリテーションデータベースは任意サンプルのみであり、無作為サンプルではない。
この研究は盲検ではなかったため、アウトカム評価の妥当性には疑問がある。


結論
AFOの処方がリハビリテーション後の入院低FIMの脳卒中患者の機能回復の改善と関連している。

AFO作製群と非作製群では対象者にバラツキが生じてしまうため、傾向スコア法を用いてバラツキを減らした状態で検討をしてくれています。これば今までではなかなかなかったので面白かったです。

結果としては作製群の方が良好な結果を示しています。

今回の論文も作製を支持する結果となりました。研究の限界はありますが、一施設ではなく多施設での検討ができたことも有益な情報となると思います。

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